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尾瀬ヶ原を訪ねて |
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尾瀬ヶ原を訪ねて |
| ２００３年６月１６日 ◆尾瀬ヶ原を訪ねて
大木の木々も雨に濡れて葉から枝からシトシトと水滴を垂らして濡れる富士見下の駐車所に車中泊して朝を迎えた。舗装された１本の長い直線の道の両端に繁る落葉広葉樹林に雨が降り注ぎ大粒の水滴から新緑の香りがプンプンと漂い小生の心も爽やかな気分でコウモリをさしてゲートから富士見峠まで７kmの林道を歩き始めた。 笹原の中に生い茂る大木からの雨音を聞きながら、十二曲りを過ぎて笹の刈られた平坦な地表に残された木々の美しさを見て足早に登って水場を過ぎて暫くすると１台のワゴン車が走ってきた。川の流れの音も遠のいて雨も止みコウモリもたたんで杖がわりにして９０分かけて富士見峠に着いたら、ワゴンに乗ってきた４人のパーテイが歩く仕度をしていた。 「おはようございます」 「おはようございます」 「乗せてきてもらったんですか」 「はい そうです」 「まいるなあー 自分は歩いてきたのに」 と小生はぼやいていたら、彼らは嫌な顏していた。それから小生は富士見峠の小屋の付近を見て回った。２８年前に来た面影とだいぶ変わっていた。小屋は新しくなって、その前の所は広々とされていて、何かの施設が作られていて、トイレも出来ていた。
群馬県尾瀬憲章 昭和４７年５月１１日制定 尾瀬は、自然の偉大な恵みによって生れた、 自然の厳粛な法則のもとに、優れた原始的景観を 保ってきた。 高層湿原をいだく美しい自然はここに生育する動植物とともに極めて高い学術的価値を有している。 この貴重な尾瀬の自然は、先祖から受け継いだ尊い有り遺産であって、これを国民の宝として大切に保護し、後世につたえることは、我々の責務である。 ここに、我々は尾瀬の自然の美しさを愛し、その尊さをいっそう深く認識し、厳正な保護と秩序ある利用のもとに国民の願いをこめて尾瀬の自然を守ることを誓う。 １、尾瀬を訪れる人は、その自然を愛そう １、尾瀬に接する人は、その利用に責任を持とう １、尾瀬に親しむ人は、その豊かな恵みに感謝しよう １、尾瀬を尊ぶ人は、その景観を破壊から守ろう １、尾瀬に誇りをもつ人は、その美しさを後世に伝えよう 尾瀬を後世に伝えることは、県民あげての願いである 富士見峠から十二曲りを下って八木沢橋を渡って下田代キャンプ場に着いた。キャンプ場を今年ブルトーザーでかき回したのか草はゼンゼン出ていなくて土の肌がむき出しであった。自然らしさを残しながら整備して欲しかったと感じた。各小屋を見ながら下田代十字路に来た。
雨上がりの草木も濡れていて何処までも広がる尾瀬ヶ原の広さに目を奪われて見つめていた。至仏山や燧ヶ岳に景鶴山の頂きは雲で覆われていたが尾瀬の管理の叔父さんと時々話をしながら痛みはじめている木道を歩いて写真を撮ったりしてのんびりと龍宮へ向かった。
火山や地表の異動によって池が出来て数万年の長き年数によっていろいろな植物などが生えては枯れて繰り返しながら現在の湿原が小生の目の前に見せてくれている。そんな尾瀬ヶ原を見渡せば何度も訪れた過去の尾瀬も思い出させてくれる。
水芭蕉もそろそろ終わりなのか大きく成長して花々も少ない尾瀬ヶ原の景色であった。見知らぬ人とと話をしたりしていつの間にかかなりの時間が過ぎて行った。尾瀬ヶ原で約３時間、時を過ごしてから龍宮十字路から長沢新道を登って残雪を踏んで富士見峠を越えて愛車に戻った。
2021-12-05・・・日経より ◆尾瀬を未来へ、保護50年の今 草紅葉のかがやきに心が弾み、いろどられた山肌に声を上げ、空を映す沼の静けさに癒される・・・・・尾瀬の秋は一編の交響曲(シンフォニー)となって、訪れる人を包み込む。経済発展を求めた昭和時代は縦貫道を建設する計画もあったが、1971年、尾瀬を守る反対運動で覆した。今年はそれから50年の節目だ。厳しい気候と歳月がはぐくんだ かけがえのない景観を未来へ届けるにはどうしたらいいか。現地を歩きながら考えた。
◆豊かな大地 神秘の眺め 10月前半、尾瀬を訪ねた。湿原を白く覆った霧が、ゆっくりと動き始めた。どこまでも延びる木道を音もなく洗いきよめては遠ざかり、流れ去っていく。東の丘の斜面から差し込む陽光に至仏山（標高2228㍍）のたおやかな峰は赤く染まって、刻々とその装いを濃くする。秋が深まる尾瀬ケ原は、朝を迎えた。快晴の兆しである。風が吹きだした。サラッ、カラッと草がふれ合って鳴り、フーガのように音が重なり合う。早立ちの旅人らが、驚いたかのように振り返った。尾瀬は群馬、福島、新潟の3つの県にまたがり、1400㍍もの高層に広がる湿原や沼、そして山々からなる。至仏山とともに、この地を代表する燵ケ岳（同2356㍍）の噴火などを機に、形作られていった。枯死した植物が気の遠くなるような歳月をかけて堆積し、そこへ日本有数の豪雪地帯という気象の条件も加わった。 自然の過酷な試練が太古そのままの織細で優美な眺めをつくり出し、絶妙のバランスを保ち今に残されている。遅い遅い春を告げるミズバショウ。5月下旬の山開きのころには、山々の残雪とのコントラストが鮮やかだ。夏にはニッコウキスゲが群舞し、一帯を黄色に染める。そして晩秋は、四季のフィナーレへ向けた荘重な面持ちがある。ガイドに連れられた高校生風のグループは、湿原の一角でスマートフォンでの撮影に余念がない。「すげえ」「やばい」の声が響く。その隣ではベテランらしいハイカーらが「尾瀬は、やっぱり秋だな」と感嘆を漏らしていた。池糖に映る山腹がさざ波で乱れる。小さなハート形のヒツジグサは水面で恥じらうように葉を赤に変えていた。 ダケカンバやシラカバが、うねる川に沿って枝を宙にさし伸ばし、その先の空はどこまでも高い。尾瀬は労をいとわずに訪れた者にのみ、神秘のベールを脱ぎ、その内側を惜しげもなく見せてくれるようだ。古い唱歌に「はるかな」と形容されたが、高速交通が主流の現代でも、核心部への道のりは長い。例えば、東京都心からなら、まずは上越新幹線で上毛高原駅まで約1時間移動する。そこからバスを2台乗り継ぎ約2時間半で、入山口となる鳩待峠に着く。湿原へ足を踏み入れるには、さらに1時間ほど木造や階段を踏みしめねばならない。尾瀬沼のほとりをめざす峠越えの別ルートも、ほぼ同じ交通機関を利用した後、1時間超の登山を強いられる。途中、ミズナラやブナの原生林がみごとだ。こんなアプローチの悪さゆえに長い間、人を簡単には寄せ付けず、手つかずの自然が保たれてきたのかもしれない。 一万で、尾瀬は江戸時代には福島県の会津地方と群馬県の沼田地方をむすぶ交易の要衝でもあった。明治初期の戊辰戦争での混乱期を経て、福島県槍枝岐村の平野長蔵が、燵ケ岳への信仰から、沼の西岸にあたる沼尻に参籠施設を設けた。1890年、尾瀬開山の年といわれる。長蔵は檜枝岐や尾瀬でさまざまな事業に着手するが、失敗した。大正年間に入ると、土地の美しさに引かれ、旧制高校の学生らが訪れるようになって、建物を宿泊施設として活用するようになったらしい。水の豊かさから、水利権をめぐる争いやダム建設の計画が浮上したこともある。だが、この地を愛してやまない長蔵を中心に、学者らの保護の輪が生まれ、尾瀬を戦後へと伝えてきたのはまちがいない。 やがて、豊かになった人々の奔流が、尾瀬を深刻な課題に直面させることになっていく。「観光資源の開発を」「過疎対策を」といった声に押され、自動車が通れる道路で尾瀬を貫き、群馬と福島の両県を結ぼうという戦前からのプランが本格的に動き出した。実は、今年は尾瀬の保護にとって節目の年にあたる。ちょうど半世紀前の1971年、地元の悲願ともいわれたその道路の計画が、正式に撤回されたのである。長蔵の子孫にあたる長靖民らを中心に、学者や市民の運動が、当時の環境庁長官である大石武一氏を動かしたことが大きい。東京の銀座や新宿での訴え、署名活動などを通じ、世論をも巻き込んだ。すでに工事は進んでいたため、ギリギリの決断だった。各地で繰り広げられた同種の運動の手本ともなった尾瀬は今、新たな局面を迎えている。
◆尾瀬ヶ原、発展と自然共生の解は 美しく、豊かな自然を誇る尾瀬は長く活用と保護のはぎまで揺れてきた。尾瀬に木造の整備が始まったのは1952年だ。増える来訪者に湿原が踏み荒らされるのを防ぐためだった。現在、総延長は65㌔にもなる。統計を見ると、1996年度に65万人だった入山者は、レジャーの多様化で減少傾向へ転じた。平成の末には20万人台となり、昨年はコロナ禍で10万7千人に落ち込んだ。ミズバショウの開花期など特定の時期に入山者が集中する問題に加え、地域に恩恵を与えるため、現在はアフターコロナのインバウンド（訪日外国人）を含めた旅行需要をにらみ、様々に整備をする動きが出始めている。その方向性は、果たして正しいものなのか。解は、なかなか見つからない。尾瀬沼の北西にある沼尻地区。湿原には休憩施設もあり、静かな水面にカメラを向ける人も多い。 この一角で、昭和のオーバーユースの爪痕をみた。「こっちです」。NPO法人「尾瀬自然保護ネットワーク」のメンバーらに導かれ、木造を外れて森の奥へ踏み分けていく。やがて土がえぐれ、巨木の根がむき出しになった空間が現れた。さびた空き缶や空き瓶が、うち捨てられたままになっている。一瞬、目を疑った。「昭和の負の遺産です」。同ネットワークの磯部義孝理事長が語り始める。缶のデザインなどから1970年代のごみのようだ。l㍍も堆積していたものを、十数年前に約10トン超、ヘリコプターでつり上げ撤去したが、片付け切れてはいない。木の根にからみつき、地層と一体になったように横み重なったものもあった。 「一部の山小屋の関係者が長年、捨てていったのです。これ以上、撤去しようとすると、木が倒れてしまう恐れがある」と磯部さんは説明する。この日は、ハイカーらに、この地への理解を深めてもらう「尾瀬アカデミー」の一環で、約20人でやってきた。尾瀬に70回以上、訪れているという訓代の男性も「初めて知りました。衝撃的です」と驚きを隠せない。一行は、尾瀬沼から群馬県を流れる片品川方面への取水口も見学した。同NPOの大山昌克理事らによると、本来、尾瀬の湿原を潤し日本海側へ流れるはずの水の一部が、発電などへの利用のために群馬側に流れ、結果として湿原の乾燥化が進んでいるという。山小屋や公衆トイレの合併浄化槽やその処理の仕組みなども実際に足を運んで見学した。 環境保全と観光資源としての利用のバランスに関して、考えを深める機会となったようだ。尾瀬は50年前に山小屋の関係者や市民らの手で縦貫道路の計画を断念させ、同種の運動の手本ともなった。しかし、最近は国内の少子高齢化を背景に、インバウンドを中心に新たな来訪者を増やすため、国立公園の魅力を再構築するプロジェクトが動き出した。「上質な体験の提供」「にぎわいが失われた地域の再活性化」といった掛け声のもと、さまざまな計画が浮上している。周辺の県幹部らからは、「尾瀬には質の高い空間づくりが必要」といった発言があった。数年前には環境省の省令も改まり、国立公園内に分譲型ホテルなどを建設する道が開かれた。 また、周辺の自治体の一部は、峠周辺の樹林の大がかりな伐採を国会議員らに陳情したという。景観を整えて観光客を呼び込もうという策で、ほかにもグランビング施設の整備といった腹案も検討されているようだ。なかには静かな尾瀬沼でカヌー体験をしてもらう、といったプランもあるという。一ハイカーとして尾瀬を歩いた身としては耳を疑う。大山理事も「とんでもない話だ」と切れのいい江戸弁で憤る。現在、20ほどある山小屋も、数が多すぎるうえ、宿泊者への風呂の提供などで生態系へ負荷をかけているとの指摘は以前からある。今回、好天に恵まれ、沼の周囲や湿原をめぐり、強く感じることがあった。 「尾瀬は、私たちが自然や環境へ向き合う真撃さを試す場」だということだ。開山以来の歴史の中でダムや縦貫道を断念させた先人の思いが、美しい光景を残し、多くの人に感動や恩恵を授けている。同様に、この地の未来の姿は私たちの手にかかっていよう。上質なツーリズムの実現やワーケーションへの活用も享受したいとはいえ、そのために長年守られてきた自然が損なわれてよいだろうか。我々一人ひとりが自分事として考え、見守らねばならない。尾瀬は長い冬ごもりのさなか。雪解けを迎えるころには、旅行需要の爆発も予想される。保護し、伝えるために何が必要か。覚悟と行動の春となる。毛糠秀樹・山口朋秀撮影
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